時間や空間感覚の変調をもたらし、精神が一時的に昂揚し、非常に感謝の念が強くなったり、強い健康を感じるようになる状態である多幸感は、性ホルモンを含むステロイドホルモンの正常な分泌によってもたらされることも分かりました。性ホルモンの分泌を刺激する物質は、脳の奥深いところにある視床下部というところから出ています。視床下部周辺は、情動や愛情などを司る場所であるため、愛し合っていることがとても健康によいことや多幸感につながる、ということがよく理解できますよね。
また、ステロイドホルモンは、血糖値の上昇、水分の保持、気分の高揚など、すべて生体のエネルギー利用を助ける方向に作用します。このため、ステロイドホルモンを分泌する副腎皮質の機能不全や、副腎皮質を制御する下垂体の機能不全でステロイドホルモンが不足すると、全身の倦怠感などが出現するのです。いわゆる環境ホルモンや製剤などの内分泌撹乱物質は、ステロイドホルモンの受容体と結合し、生体に悪影響を及ぼすことが多いとされています。体内で分泌される正常なステロイドホルモンは、心身の健康に大きく役立っているようです。そして、その分泌を正常に保つに必要な部分もやはり脳内の生理現象なのです。